『天元突破グレンラガン』と気合と例の大学

 この前ニンジャバットマンを見て、中島かずきを見たくなったので『天元突破グレンラガン』を見た。いやースケールが本当にバカみたいなアニメだった。ロボットアニメあんまりみないけどこのスケールのおかしさはグレンラガン特有のものだったのかな。あと声に出して読みたいセリフが多すぎる。全然頭に入ってこないけどものすごく心地よい耳ざわりというかテンポのセリフがいっぱいで、見習っていきたいと思った。
 
 気合はやっぱり何につけても重要で、気合で何でも乗り越えちゃうフィクションの中においては特にそうだ。後半(7年後の世界)でロシウは、今まで作り上げてきた社会やシステム全体を維持することを最重要視していた。また20話あたりで彼は、他の大グレン団のメンバーたちが100万人の人類と地球を守ろうとしたのに対し、少数の人間でもいいから人間という種を存続させようという選択を取った。これは21話のサブタイにもなってる、ロシウのヨーコに向けた「あなたは生き残るべき人だ」というセリフに如実に表れていると思う。ロシウのこの思想、この選択は、この作品の中では結果的に間違っていた(もしみんなが彼に従っていれば人類は滅亡していた)が、シモンは一貫して彼のこの選択を否定はしてなかったと思うし、自分としてもロシウの思想それ自体は筋は通っていると考える。7年前とは違い背負うものが大きく、理想をまるまる追い求めては守れるものも守れない。現実的、保守的な考えを持つことは必ずしも悪いこととは限らないだろう。しかし問題はここからで、ロシウはこの現実主義が失敗に終わった後責任を感じ、自殺を図ろうとする。そこでシモンにぶん殴られるわけだが、この「ぶん殴る」という行為がなかなか象徴的だと思う。こういう場合の「ぶん殴り」は、その人の選ぶ道それ自体に意見する「諭す」と違い、あくまでその人の主体的決定を促すということが目的で、「気合を入れる」という側面が強い行為のような気がする。このあとのことはそこまで描写されてないため、詳しいことは言えないが、ロシウは地球に残ったことから、変わらず秩序を維持する役割を果たしていたのだろう。要するに言いたいことは、ぶん殴られた後も、考えの根幹はそこまで変わってないということだ。その身に命の重みがのしかかっているという事実を受け入れ、耐えられるようになったというのが唯一変化したところだろう。
 ロシウはかつてのロージェノムやアンチスパイラルと同じ理屈で行動していたように思う。ある種功利主義的な、人類や宇宙全体を見通した考え方だ。反対にシモンは個人の自由的なものを突き詰めていったわけだが、だからといって全体を壊すこともなく、最終的には弁証法的な解決に気合で至った。で、ここでなんとなく関連付けてしまったのが、最近話題となっている東京医科大学の女子の点数を一律で下げていたという問題だ。この問題には色々立場があると思うが、さらっとtwitterで見た感じ、この明らかな女性差別へ反対するリベラルvs現行の医療制度を堅持しようとするコンサバの対立となっていると思う。前者は女子受験者にとっての損害やそれに伴って男女で医者になる機会の多寡が生じてしまうということを考慮した結果の主張であり、後者は現行の質の高い医療制度(比較的多くの人が簡単に医療を受けられるという意味)は医師への高負担の上に立脚していると考え、女性は出産でどうしても現場を離れなければならないときが出てしまうため、男性医師が多いことには一定の合理性があるという立場をとっている。ついこの間まで受験生だった僕としては、男性が多いことに合理性があったとしても、受験に隠れた不平等があったってのはなかなか辛いものがあるとは思うが、医療現場の男女比を均等にしなければならないかというとなかなか厳しい気がする。というのも、リベラルのこの主張では、表面だけ平等にしたところで今まで医療を受けられていた人々が受けられなくなってしまう可能性を孕むからで、リベラルな立場から考えた場合そういう人たちを切り捨てることはできないはずだからだ。またコンサバの主張のほうも、女性は医師になりにくく、そして男性へ現場での負担をかけているという現状をしっかり鑑みていかなければ、もちろん彼らの考えとしては、こういう人たちに対する責任を感じることはなく、バッサリ切り捨てるという選択肢もあるのかもしれないが、現行の医療制度を持続させるという大きな目的も果たせなくなる日が来るかもしれない。
 要するに、どちらの立場に立つにせよ、気合が必要だということだ。無論、フィクションの世界のように、気合があれば誰もが幸せになる解決法が見つかると言いたいわけではない。現実で「無理を通して道理を蹴っ飛ばす」ということは不可能だ。しかし、自分の主義主張に一貫性を持たせ、筋の通ったものにするにはあらゆる利害を考え、現実に落とし込むにはどうすればいいか考え抜く気合が必要なのだ。これだけ言うのはなんだか無責任な気もするが、自戒の意も込めて記しておこうと思った次第。
ちなみに僕はガチ左翼なので人間が種を残すという行為それ自体に反対の立場です。